【書籍 新品】グッドバイ 著者:朝井まかて

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菜種油を扱う長崎の大店・大浦屋を継いだ希以(けい)26歳。

幕末の黒船騒ぎで世情騒がしい折、じり貧になる前に新たな商売を考える希以に、古いしきたりを重んじる番頭の弥右衛門はいい顔をしない。

やがて店は火事で焼け落ち、父は出奔、迎えた婿も気に入らず、いつしか独りで大浦屋を支えることを誓う。

 

幼い頃に亡くなった祖父から聞いた言葉、「海はこの世界のどこにでもつながっとるばい。

昔は自在に交易できたばい。

才覚さえあれば、異人とでも好いたように渡りあえた」が幾たびもも胸に甦る。

たまたま通詞・品川藤十郎と阿蘭陀人の船乗り・テキストルと知り合い、茶葉が英吉利では不足しているという話を聞き、ここぞと日本の茶葉を売り込む。

待ちに待って3年後、英吉利商人のオルトが現れ、遂にお希以は旧弊なしがらみを打破し、世界を相手にするのだ――。

 

成功と落胆を繰り返しつつ、希以――大浦慶が経たいくつもの出会いと別れ。

彼女が目指したもの、手に入れたもの、失ったものとはいったい何だったのか。

円熟の名手が描く傑作評伝。

 

出版社:朝日新聞出版社(朝日文庫)
発行年月:2022年10月

文庫版
440ページ

 

店主のコメント

主人公の大浦慶が輸出したのは「緑茶」ですが、同じチャノキ(カメリア・シネンシス)から作られる仲間として、紅茶屋の当店でも本書を取り扱うことにしました。

幕末から明治初期の歴史小説は数多ありますが、薩長、龍馬、新撰組・・・と、江戸や京都を舞台とし、「刀を差した」男たちを中心に展開する作品がなじみ深いかと思います。

一方の本書はというと、主人公は長崎で外国人を相手取る女商人・大浦慶(実在の人物です)。

変わりゆく時代に合わせながら、根気強く、時に大胆に商いをする慶の視点からは、武士中心の視点とはひと味違った幕末を見ることができます。

 

加えて、海を越えて世界を旅する「茶」のダイナミズムも楽しんでいただけたら、紅茶屋としては嬉しい限りです・・・!

 

著者:朝井まかて(あさい・まかて)

1959年、大阪生まれ。甲南女子大学文学部卒業。コピーライターとして広告制作会社に勤務後、独立。2008年、第3回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。受賞作は『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』と改題され、講談社文庫に収録されている。江戸時代の職人たちの丹精な仕事振りと細やかな人情を、心温まる物語に織り上げて、愛読者急増中の実力派である。他の著書に『ちゃんちゃら』『すかたん』『先生のお庭番』『ぬけまいる』がある。

 

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